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  • 執筆者の写真The Peach City

「本姿」をゆるがすことなく、文化の変遷に寄り添って 笛吹市甲斐國一宮浅間神社が、今世に果たす役割

笛吹市の「甲斐國一宮浅間神社」は、1155年前に創設された歴史深い神社。賑やかな春を告げる例大祭の「おみゆきさん(大神幸祭)」が今なお人々に親しまれているほか、初詣、お宮参り、七五三など、節目ごと多くの人がお参りに訪れています。本記事では、いつの時代も地域の産業とともにあった、浅間神社についてお伝えします。



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甲斐國一宮浅間神社


宮司 古屋 真弘(ふるや まさひろ)


平成25年より、宮司をつとめる。宮司として年中行事を執り行い、神社のあるべき姿を守りつつ発信にも力を入れている。「産地」を生かした、一風変わったお守りも考案。


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富士山の噴火を鎮めるための祈りを捧げた神社


「甲斐國一宮浅間神社」が創設されたのは、今から1155年前の貞観7年(865年)。



「よく尋ねられるのは、『せんげんですか? あさまですか?』という神社名の読み方のこと。私たちの神社は『あさまじんじゃ』と読みます。『あさま』は訓読み。訓読みは日本古来の発音(漢字の読み方)であり、それはつまり浅間神社では、中国大陸から漢字などの文化が伝わるよりも前に神様をお祀りしていたといわれています。


ここは富士山の噴火を鎮めるために建てられました。とはいえ、浅間神社からは富士山は見えないんですよ。もちろんそれには理由があって、富士山噴火の被害を受けないようにと距離を考え建てられたから。さらに、万が一の際に神様が正面から被害を受けないように、本殿が富士山に対して90度横を向いているという特徴もあります」


成り立ちについてこう聞かせてくれるのは、古屋真弘宮司。


浅間神社に祀られている神様は「木花開耶姫(このはなさくやひめ)の命」という火を鎮める神様で、もともと浅間神社がある「里」よりも標高の高い山宮神社にお祀りされていた神様のおひとり。富士山噴火の折にその火を鎮めるために「里」にお越しいただき、神社を設立させたというのが浅間神社のはじまりです。



「日本遺産」に登録された“葡萄畑が織りなす風景”と葡萄酒づくりの神様


果樹栽培日本一の甲府盆地。その東部は、平坦地から傾斜地まで葡萄畑が広がり、季節ごとに様々な表情を見ることができます。その美しい風景は“葡萄畑が織りなす風景”として、平成30年「日本遺産」に登録されました。


「日本遺産」とは、文化庁が定める歴史とストーリーのある有形・無形の文化財郡。地域に点在する遺産を地域が主体となって活用し、その魅力を国内外へ発信するもの。浅間神社はその構成文化財の一つに指定されています。


「この神社の近くに『釈迦堂遺跡』という縄文土器が発掘された遺跡があります。つまりそれは、はるか昔からこの地に集落があり、人々が生活を営んでいたという証です。作物が育ちやすい恵まれた土地であったということです」


長らくずっと稲作が中心だったと考えられていますが、明治時代からは桃や葡萄の栽培が始まり、同時期に日本で初めてワインの醸造をスタート。昭和30年代には米から果樹へと産業が変革。現在は日本一のワイン大国となりました。


しかし古屋さんは次のように語ります。


「御神徳ではないか、と私は思うんです。実は木花開耶姫(このはなさくやひめ)の命は酒造の神様。木花開耶姫様に子どもができた際、孫ができたことを大変喜んだ父君の大山祇神(おおやまつみのかみ)様がお祝いにお酒をつくったのが酒造の始まりといわれています。古事記によれば、そのとき酒造したのは日本酒とありますが、木花開耶姫らが暮らしていたのは山の上です。山の中に入って野葡萄を摘み、それをお酒にした…と考えたら、このお酒は現在のワインにつながる“葡萄酒”だったのではないかなあと。遥か神話の時代からこの地でワインが造られていたと描くことは、ロマンがありますよね。その土地にあった神話があってもいいんじゃないかな」



歴史を守りながら、新しいことにチャレンジを

昭和40年頃から、3月に執り行われる「山宮神幸祭(やまみやみゆきさい)」に、この地のワイナリーからワインの新酒が奉納されるようになりました。浅間神社では、奉納されたワインを遠方からの特別な参拝者にお神酒として使用しています(通常は日本酒)。また、近年使用済みのワインコルクをお焚き上げして自然にかえす「ワインコルク感謝祭(コルク供養)」が行われるように。地域の産業と神様の密接な繋がりを感じさせます。


ワインを封入したお守り『葡萄酒守』

「境内にワインの一升瓶が並ぶ光景は非常に珍しい様子で、多くの方が写真を撮っていかれます。ワインでいえば、神社では、『葡萄酒守』というワインを封入したお守りも販売しています。それ自体が珍しいこともそうですが、訪れた方に興味を持ってもらい、この地のことをより深く知っていただきたいという思いがあります」



郷里の産業と神社を結ぶことを考える古屋さんは、『葡萄酒守』のほかにも、宝飾研磨産地である甲府のジュエリーを用いた『踊るお守』や、織物の盛んな西桂の傘生地を用いた『勝虫守』など、地域のストーリーが詰まったお守りを考案。


「もちろんいずれもお守りのセオリーを遵守した上で、新しいものをご提案しております。『面白い』と興味を持ってもらうことは、神社にとっても大事なこと。足を運んでいただいてこそ、神社を伝えることのスタートです」



「感じたいものを、感じればいい」

御朱印ブームに、新しい参拝のスタイルやお守り。近頃は神社が随分身近になりました。しかし、神社は、興業(エンターテイメント)との境目を脅かすことはありません。



「神社は人々が訪れやすいように構えていても、訪れてくれた皆様に対して軽い態度をとるようなことはありません。ただそこに在るだけ、『在るのは知っているけれど、行ったことがない(行くきっかけがない)』という人がどんどん増えて、神社が生活と疎遠になります。だからこそ、歴史ある神社であれど、文化の移り変わりや時々のニーズを捉えることは必要。時代に神社から歩み寄るような姿勢も求められていると感じます。訪れた方が気持ちよく過ごせるためにどうするか、という神社の本姿を忘れないこと。それが私たちの核にはありますから」


神社の参拝はいつでも任意。行きたくなったら、自分が「ここに向かえば前に進めそう」と思う神社へ向かえばいいと古屋さんは教えてくれます。


「お参りに『行かなければいけない』や『行った方がいい』ということよりも、ふとしたら自分の心に従えばいいと思います。そして、感じたいものを感じればいいです。神社に参拝すること自体にその人の気持ちの持ち方や在り様があらわれています。労力と手間をかけて、神様に会いにいく。それはすでに気持ちが動いている証拠であり、その人が前に進んでいくということにもつながるのではないでしょうか」






\古屋さんに会いに行ってみよう!/

 

場所:   甲斐國一宮浅間神社

住所:   笛吹市一宮町一ノ宮1684

電話番号: 0553‐47‐0900



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